Bizen x Whichford
2017年、日本の工芸である備前焼とイギリスの文化が出会い、新たな物語がゆっくりと歩みだしました。
800年以上続く備前焼は、昔から花器や食器、細工物といった日本の伝統工芸品を主に生み出してきました。どの時代においても常に変化を続け、特にうわぐすりを使わずじっくりと焼く「焼締め陶芸」という概念を堅持しながらも、シンプルな中に無限の可能性を秘めた産地でもあります。
プロジェクト始動の10年以上前、英国でガーデニング用フラワーポット(園芸鉢)を手がける世界的な陶芸工房 Whichford Pottery (ウィッチフォードポタリー) の代表 Jim Keeling (ジム・キーリング) は備前に何度も足を運び、その素朴で味わいのある備前焼に強く惹かれていました。そして、そこで出会ったのが、当時二十歳で備前焼作家を志す石田和也氏でした。
数年後、その出会いは実を結びます。石田氏はWhichford工房で職人として1年間修行し、後には「Oxford穴窯プロジェクト」でJim氏と共同で薪窯を築きました。両者は文化の交流に焦点を当て、様々なイベントやコラボレーションを経て、陶芸や文化が持つ価値を自分たちの手でいかに広げられるかという取り組みを重ねてきました。
そして、この取り組みが伝統的な備前焼を新たな方向へ導き、価値創造への挑戦として生まれたのが、Bizen x Whichford プロジェクトです。
備前焼と園芸鉢、全く異なるジャンルでありながら、「無釉焼締め陶(むゆうやきしめとう)」という共通点から、完全オリジナルの「Whichford at Bizen」フラワーポットが誕生しました。日本が誇る、多種多彩な「焼け」や自然の存在感をフルに感じられる備前土。そこに、古くからヨーロッパで受け継がれてきた装飾技法やシンメトリーで力強いフォルムが融合しました。
Whichford at Bizen プロジェクトは、日本と英国の文化、また関わった職人やガーデナー、サポーター全ての想いが一つとなり、歩み続けています。
【プロジェクト監修】石田 和也

1986年、備前市伊部に生まれる。高校卒業後、家業である備前焼の道へ進み、備前焼人間国宝 伊勢崎 淳氏に師事。その後イギリスへ移り、現地の陶芸工房で伝統技法や語学、文化を学ぶ。
色のついた泥を用いて模様をつけるイギリスの伝統技法 スリップウェアや、ろくろの遠心力を利用し、ねじれを活かした技法 -螺法- を得意とする。
【Whichford Pottery 代表】ジム・キーリング

12年前、初めて備前焼と出会った時、自分自身の伝統である素焼きのフラワーポットを既に30年間英国で作り続けていました。
繊細で幾つもの高度な技術を十分に理解してこそ生み出される備前焼は、多彩な変化を可能とする備前土をゆっくりと長時間焼くことにより生まれます。
自分がしてきたこととは全く違っていましたが、そこから放たれる力に瞬く間に感動を覚えました。
だからこそ、まだ挑戦したことがない、完全に新しい作品の創造を通して、備前という地域社会と関われることを大変光栄に思っています。
個性的な備前土と窯に順応した、英国ならではの力強いデザイン。まさに、使うために作られたフラワーポットです。
